7年前にふと頭に降ってきた屋号。
「今此処」
「今」すでに「此処」にある奇跡に気付いて過ごすことができれば、自ずと幸せを感じことができるはず。でもそれは慌ただしい日々の中では、簡単なようですごく難しいこと。だからこそ僕の宿にいるときだけでも「今此処」を感じてほしい。
そう思って名付けたのはいいものの、名付け親が「今此処」を生きていないと説得力がない。
でもこれが本当に難しい。
「今此処」を深めようと思って調べていった結果、たどり着いたのが「マインドフルネス」でした。
マインドフルネスは宗教じゃない
まず最初に誤解のないように。(僕自信が誤解していました)
「マインドフルネスは宗教ではなく、幸福度を上げるスキル」です。
「マインドフルネス」とか「瞑想」と聞くと、僕はなんだか「瞑想して空を飛ぶ」とか
「滝に打たれて悟りを開く苦行」その先には何かオカルト的なものが待っていると勝手にイメージしていました(笑)なのでなかなか手をつけられずいましたが、昨年末に、心から信頼しているネイチャーガイドの師匠「安藤誠」さんと「人見ルミ」さんの対談動画を観る機会がありました。
テーマは「マインドフルネス企業研修トップ講師・人見ルミ氏対談」
聞いていくと、マインドフルネスとは「科学的エビデンスに基づいて、心と体を健康にし、よりハッピーに生きるスキルなんだ」ということがはっきりとわかりました。
人見さんは、様々な企業(実績企業はこちら)でマインドフルネス講師として活躍されていて、人見さんからなら安心してマインドフルネスを学べると思いました。人見さんの経営する「株式会社サンカラ」ではマインドフルネスプロ認定制度があったので、せっかく学ぶならとことんやりたいと思って申し込みました。
毎週土曜日5〜6時間の研修が5回、そして6回目は実技試験という約1ヶ月半のプログラムでした。講義の内容や日々の課題、実践に加えて、講義の中で紹介された書籍や、自分が気になった事柄や人物に関してもたくさん調べて、マインドフルネス漬けの日々を過ごしたお陰で、今はマインドフルネス(心の筋トレ)が日々の習慣の一つになっています。
マインドフルネスの基礎知識
▶マインドフルネスとは?
スポーツ界でよく言われる「ゾーン」に入っている状態のこと。実際にイチロー選手や、ジョコビッチ選手もマインドフルネス瞑想を取り入れていました。もう少し詳しく説明すると以下の3点が揃った時に、最高のパフォーマンスを発揮できる状態「マインドフルネス」と言えます。
①無意識なことに(思考、感情、呼吸、身体)に注意深く気付いている
②心穏やかである
③今此処に集中している
▶マインドフルネスになるためには?
マインドフルネスワークはたくさんあるが(食べる瞑想、書く瞑想、歩く瞑想などなど)、メインとなる手法は、マインドフルネス瞑想(頭の中の思考や感情、雑念を無理に追いやるのではなく、ジャッジもせず、自然と消え去っていくのをただ観察する)になります。
▶マインドフルネスのメリットは?
世界中の大学で様々な研究が行われています。瞑想熟達者(瞑想時間1万時間以上)の瞑想時の脳の血流の変化などを測定し、科学的に証明された5つのメリットがあります。「科学的証明」だからこそGoogleが真っ先に企業にマインドフルネスを取り入れ、Meta、X、NIKE、Goldman Sachs、日本ではYahoo、メリカリなども導入しています。
①ストレス軽減(ストレスが引き金となる病気にもかかりづらくなる。または回復する)
②集中力UP
③生産性UP
④リーダーシップUP
⑤人間関係が良好になり、自分らしく生きられる。
▶マインドフルネスは気軽に始められる
Googleにマインドフルネスを取り入れた火付け役のチャディー・メン・タン氏は著書『サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』で、
「一日一呼吸でいいから、命がかかっているかのように呼吸するのを、一生やる」と言っています。
またベトナムの禅僧ティックナットハン氏は、著書『怒り』の中で、
「自分や自分の周りのものに意識を戻すためには、意識的な呼吸を一回するだけでよく、その状態を保つには、それを3回すればいい」と言っています。
つまり、道具もいらなければ、数分あればどこでも始められるのです。
この数分で、一日の解像度が上がるのであれば、やらない手はないと思います。
すごくざっくりとした説明なので、伝わらないこともあるかと思いますが、今後僕が展開していくマインドフルネスガイドツアーなどで、細かい部分は直接お伝えできればと思っています。
この2ヶ月間の自分の変化
年明けからこの研修が始まったので、約2ヶ月様々なマインドフルネスワークを続けているわけですが、この短い期間でも自分に感じている微妙な変化があるので共有したいと思います。
▶本当の意味で「生まれた」
今まで無意識だったことに気づくことで、一瞬一瞬の解像度が上がってきています。禅の世界では「一行三昧=一つのことに集中して物事にあたること」という言葉があります。つまり、「お茶を飲むときはお茶を飲むことに集中する」「家族と会話をしているときは会話に集中する」これは当たり前のようですが、この「当たり前」を疎かにして生きてきたのです。マインドフルネスによって「今此処」に意識が向いている時間が多くなった実感があるので、水を一口飲むだけでもより幸せに感じるようになりました。今までは「今を生きているようで、意識は過去や未来にいっていて、本当の意味で今を生きていなかった」のだと思います。
▶カッとなっている自分に気づくようになった
僕はついつい息子にきつく当たってしまう事があって、日々反省しているのですが、マインドフルネスを始めてから、自分の思考や感情と距離を取ることが少しずつできている気がします。「自分が今イライラしているな」と気付いた時点で、呼吸に意識を向けていくことで、感情任せではなく、冷静な状態で話をすることができるようになってきたと思います(まだまだですが。笑)
マインドフルネス瞑想では、「メタ認知力=視座を変える力」が培われます。
▶呼吸に意識を向ける時間が増えた
今までは呼吸に意識を向けたことが全くないと言ってもいいくらい無意識でした。でも、朝に瞑想を取り入れたことで、一日の中で「あ、呼吸!」と思う機会が増え、それによって「今此処」に立ち戻り、色んなことに気付く機会が増えました。「心が気づきで満たされている状態=感謝でいっぱい=幸せ」だと思っているので、禅の世界の「知足」だなと。「幸せは、気づいた人だけが手にできるもの」全ての環境が今のままだとしても、今よりももっと幸せになれる方法です。つまり、今が満ち足りた状態であることに気付くということです。(ちなみに娘の名前は「きづき」です。良い名前つけたなぁ。笑)
▶よく噛んで、ゆっくり味わって食べるようになった
今年の目標でも「よく噛む」と掲げていたのですが、まさかマインドフルネスと繋がっていると思っていなかったです。今自分が何を口に入れていて、噛んでいくごとにどんな味、香り、食感に変化があるか、一緒に食卓を囲んでいる家族の表情はどうか、食材を作ってくれた人、料理してくれた人、それらを育む地球にも意識を向けながら食べていると、今までのようにバカ食いしなくても満たされるし、かつ美味しく感じるのです。これが「食べる瞑想」。体にとっても優しい。スローフードの哲学もきっと深い所で繋がっているんだと思いました。
これからの豊富
僕は「ネイチャーガイド外崎雄斗」として、どんなカラーを出していこうか模索していました。
一言でネイチャーガイドと言っても、そのガイドの特色は様々で、例えば、鳥に特化していたり、植物だったり、虫だったり。僕のガイドスタイルはきっと「自然ガイド×マインドフルネス」になっていくのではないかと感じています。
奥尻島のような長閑な島では「何もしないをする」こともしてほしいと、思っていました。今も思っているのですが、「何もしない」ってめちゃくちゃ難しいんです。私達は忙しく頑張った分だけ「未来」に幸せが待っていると無意識に思い込み、常に「することモード」であり、「あることモード=今生きていること」に目を向けることに慣れていません。「あることモード」こそ「何もしないをする」ことであり、本来の自分と出会える唯一の時間となります。
都会では情報やモノに溢れ、常に何かに追い立てられているような忙しい日々。奥尻島はその真逆で、「人工物が少なく自然に囲まれ、島時間でのんびりしている」のでマインドフルな環境が整っています。例えば、交通量が少なく空気が美味しい、人口音が少なく静寂がある(救急車の音も滅多に聞こえない)、どこを見渡しても自然がある、どこで立ち止まっても鳥の声や海の音がします。森に行けば、ヒグマやマムシがいないので、真夜中にブナの森で安心して瞑想することだってできます。美味しいウニをマインドフルに食べることだってできます。この奥尻島の自然環境の力を借りて、もっと人を癒せるはずです。
僕の実体験ですが、せっかく旅行に行ったのにも関わらず、帰宅したらあまり詳細に思い出せず、本当にそこにいたのかわからない状態になっていることがあります。それは「今此処」に自分がいなかったからだと思います。
ティクナットハン氏は、著書『リトリート』の中で、
「テレビやスマホはあなたを自分から逃避させる道具。マインドフルネスは自分に呼び戻す行動」
と言っています。だからこそ、imacocoで過ごす時間は、テレビやスマホから離れて、本当の意味で「奥尻島に来ていて、呼吸をしていて、奥尻の水を飲み、ブナの森を歩き、奥尻ブルーで遊び、夕陽を眺め、美味しいものを食べ、焚き火を囲んで、温泉に入って、星を見上げて、布団に入って、目覚める」ということをガイディングしていきたい。きっとガイドがいないと「することモード」がデフォルトであれば「あることモード」に急に切り替えるのは一人だと難しいはずです。僕はゲストがそれぞれの日常に戻っても、すぐに思い出せるような奥尻島での時間。そして、実はそれぞれの日常もすでに幸せで溢れている、ということに気付くようなきっかけをお土産としてお渡しできたらすばらしいだろうなと想像しています。
今回2ヶ月の研修を受けて、試験に合格し、マインドフルネスプロ講師として認定されましたが、あくまでスタートラインに過ぎません。24時間365日マインドフルに生きられたらブッダです。笑 簡単なことではありませんし、人生をかけて意識し続けて深めていく世界ですが、1秒でも長くマインドフルな時間が持てたら、その分だけ人生は幸せに感じると思います。自分も日々マインドフルを意識しながら、科学的なことも勉強を続けて(特に脳科学)、少しでもみなさんにマインドフルネスをお伝えできるように精進します。
奥尻島の自然のチカラを借りて。
最後にティクナットハン氏の言葉を紹介して終わります。
「真の奇跡とは、今この瞬間に目覚めること。今此処が、命との唯一の待ち合わせ場所」
長文を読んでいただき、有難うございました。