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僕の中での「季節のものさし」
奥尻島に移住して3年が経とうしている。
都会で暮らしていた時には感じられなかったことが、
自然豊かな場所に身を置いて初めて感じたことがある。
それは、
僕が「季節」を感じる理由は、シンプルに自然と共に暮らしているからなのだが、「島民との交流」や「島の食材」「動物」「植物」「風」「波」などからそれらを感じるようになった。
今はスーパーに行けば真冬に夏野菜も買える、逆も然り。
また世界中のもので溢れている。どれが日本のものかすらパッと見わからない。
お金を出せば、すぐなんでも手に入る、そんな時代。
それは一つの豊かさなのかもしれないけど、大事なことを見えなくもさせているとも思う。
季節感がなくなっていくということは、自然と人間との距離がどんどん離れている証拠。
自然があってこそ人間も生きていられることをついつい忘れてしまう。
僕もその一人だった。
奥尻島に暮らしてみて、そもそも商店で売っているものには限りがあるし、
僕たちの暮らしている神威脇地区は半径15km民家も飲食店も商店もないので、
「卵がない」となっても、「わざわざ買いに行こう!」とはならない暮らしだ。
買いに行った所で、売り切れていることもよくある。
一方で奥尻島は、貨幣経済に依存しすぎていない、昔ながらの贈与経済が残っている。
いや、きっと多分そんなことも意識していない。
ただただ自分のところにある余剰分を、優しさでお裾分けしているに過ぎないのかもしれない。
それが回り回って色んなものが集まってくる。
家庭菜園をしている人は「野菜」を、ご近所さんに、
漁師さんは獲れた「海産物」を、ご近所さんに、
収穫物がない僕は「労働力」を、ご近所さんに、
お菓子作りが得意な妻は「パン」や「ケーキ」を、ご近所さんに分ける。
「旬」というのは短いもので、その時は余るくらいとれても、
その時期を過ぎると当然の如くとれなくなる。
お裾分けは「旬」な時に巡ってくるので、「旬」がわかる。
海苔は海が時化て冷える冬しか獲れないし、
山菜は木々が生茂る前の春しか採れないし、
天然のウニは海藻をたっぷり食べて成熟した夏の3週間ほどしか獲れないし、
僕の好きなコクワは秋にしか採れない。
だからこそ、旬なうちに美味しくいただいたり、
一年を通して楽しめるように加工、保存したりする。
このような暮らしをたった3年だけど経験すると、
なんとなく自分の中での季節感【季語】みたいなものが出来上がってきた。
それを一部ご紹介できたらと思います。
12月頃
冬の始まりを告げる【オオワシ】【オジロワシ】の到来。本格的な冬が始まることをようやく自分の中で認めて、外の水道の水抜きをします。
1〜2月頃
北西の厳しい寒風と荒々しい海が本格的な冬の始まりを告げる。
【フェリーの連続欠航】、【越波】による通行止め、防波堤に打ち付けられる【波の音】、舞い上がる【波の華】、道路や海岸に打ち上げられる【ホテイウオ】と【ホヤ】。寒空の中始まる【海苔獲り】。だんだんと岸壁が紫色になってくる【ふのり】。
3月頃
厳しい冬の終わりを感じさせる、フライング気味の【フキノトウ】。残雪に顔を覗かせる【福寿草】や【エゾエンゴサク】などのスプリングエフェメラル。空からは遠く【ヤツガシラ】が奥尻島に立ち寄る。
3〜4月頃
春の訪れを確信させてくれる【キトビロ】。奥尻島では「キトビロ採ったか?」が頻繁に聞こえてくると、僕の中で春が始まる。漁師さんからは【ワカメ】を分けていただくことも。奥尻島の中でも西海岸は特に厳しい冬。それを耐えた分、春の訪れは心底嬉しいものだ。
5月頃
【ブナの新緑】が言葉にできないほど美しく、【エゾヤマザクラ】が咲く頃、【タラノメ】や【ウド】が採れるサイン。体をデトックスしてくれるような苦味がたまらない。昨年、コロナで最初の緊急事態宣言が出ている最中、全国の方々に喜んでもらったのも、これらの山菜だ。(詳しくはこちら)
5〜6月頃
山菜シーズンが落ち着いてくると【磯釣り】をしている人が増える。
奥尻島は岸からも大物が狙える、知る人ぞ知る釣りのメッカだ。
海水温が上がると岸からは釣れづらくなるため、この時期に釣りをしている人が多い。
6〜7月頃
そしていよいよ僕の大好物な【桜貝】の時期だ。
奥尻島に来て感動した食材の一つ。本格的な夏がこれから始まることを感じさせてくれます。
7〜8月頃
普段は神威脇に4人しか漁師さんがいないのだが、夏になると神威脇漁港は磯舟でいっぱいになる。【ウニ】だ。早朝から磯舟のエンジン音が聞こえてくる。やっと本格的な夏を確認する。
8〜9月頃
神威脇漁港から【サバ】や【アジ】【イワシ】が入れ食いになると短い夏の終わりを感じる。とはいえ、一年で海水温が一番高い時期でもあるから、最後の海水浴も楽しむことも忘れない。
10月
つい最近まで海で泳いでいたのに、気がつけば山は秋色に。
【山葡萄】やキウイフルーツの原種【コクワ】が実っている。
ヌメリツバタケや、椎茸、ナメコなどの【キノコ】も秋を後押ししている。
10〜11月頃
そろそろ寒さに耐えきれず、【薪ストーブ】に火入れをする。
薪が弾ける音、温かいコーヒー、そしてゲストハウスからのオーシャンビューの3点セットは格別だ。
11月頃
卵が入る前の脂がのった「ホッケ」が秋のご馳走だ。いつもベストな時期のホッケを仕入れて、春先まで美味しく食べられるように【糠ボッケ】を作るようにしている。また【ヒラメ】が岸から釣れるのも嬉しい。(僕はまだ釣れていないが。笑)
季節は巡る
あっという間に森の木々たちは葉を落とし、小鳥たちがよく見えるようになる。一生懸命、木の実や虫をついばむ姿をゆっくりと観察できる。また、春までじっと耐えている【冬芽】に勇気をもらう。そうこうしているうちに、存在感抜群の【オオワシ】や【オジロワシ】が再び冬の到来を知らせてくれる。
今この瞬間を大切に
奥尻島に移住し、暮らし始めて出来てきた「季節のものさし」
これから自分の中での「奥尻島の季語」が増えていくことを楽しみに、
日々を大切に過ごしていきたい。
僕の好きな作家、星野道夫さんは言う。
その回数を数えるほど、人の一生の短さを知ることはないのかもしれない。」
まさに、と思う。
あと何度、春の訪れに感謝して「キトビロ」を採りに行けるか、
あと何度、活気のある奥尻島の夏で「ウニ丼」を食べられるか、
あと何度、紅葉した木に登り「コクワ」を採れるか、
あと何度、葉を落とした木々に止まる「オオワシ」たちの到来に感動できるか、
あと何度、子どもと。
あと何度、妻と。
あと何度、親と。
あと何度。。。
レイチェルカーソンは言う。
「見過ごしていた美しさに目を開く一つの方法。
それは、もしこれが今までに一度も見たことがなかったとしたら?
もしこれを二度と再び見ることができないとしたら?と自分に問いかけてみることです」
そう考えれば考えるほど「今ここ」の瞬間が奇跡であり、感謝の気持ちが湧いてくる。
「奥尻ゲストハウスimacoco」、そして僕たちを通して、
「今」すでに「ここ」にある奇跡を伝えられたら何よりです。
奥尻島に暮らせていることに感謝を忘れず、少しでも島に恩返しができるように、
僕にできることをやっていきたいです。
移住4年目を迎えるイマココファミリーを、これからもよろしくお願いいたします。
『旅はやっぱり出逢いと交流でしょ!!』
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そんな方にはぴったりの宿です。