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スプリングエフェメラルとは?
まだ雪が降ったり止んだりを繰り返している寒い時期に、すでに花を咲かせている植物がいる。
それらを総称して『スプリング・エフェメラル(春の妖精)』と呼ぶ。
彼らがまだ温かくなりきらない時期に花を咲かせ、短い命を全うするのには意味がある。
春の妖精たちの戦略
①木々たちが芽吹く前、大地まで燦々と太陽が降り注ぐうちに芽を出し、花を咲かせ実を結んで枯れる。
②この時期に花を咲かせる植物が少ないということは、虫に花粉を運んでもらう植物にとってはライバルが少なく子孫繁栄の側面から見ると受粉の確率が上がり、有利な時期である。でも虫の少ない時期だからより目立つように、花は派手になっている。
③また寒い時期に開花するのは、それなりのエネルギーが必要となる。そのエネルギーは毎年春の間に得た養分を球根に少しずつ蓄えていることで、春先に一気に花を咲かせることができる。
カタクリは夢を諦めない
ちなみにカタクリは花を咲かせるのに7年以上。遅いのは10年もかかる。
葉が一枚の場合はまだ開花の準備ができていない証拠。
その時は球根に養分を貯めることにのみ専念する。
長命のカタクリは40年以上も花を咲かせ続ける。
人間であれば努力が7年も実らないと諦めてしまうこともあると思う。
でもカタクリ達は花が咲く日を信じてひたすら準備を続ける。
ただなんとなく咲いているように見えるカタクリにも見えない努力がある。
そう思いを馳せながら開花する姿を見ると、なんだかジーンとくる。
カタクリの戦略
カタクリは花粉を虫に運んでもらうことを選んだ虫媒花(ちゅうばいか)である。
ということは
①虫に寄ってきてもらう。
②花粉を身体に付けてもらう。
③運んでもらう。
必要があるため、カタクリは色々考えた。
そこでカタクリがとった作戦は
『よし!花を下向きに咲かせよう。そして雄しべと雌しべを長く付き出そう』
こうすることで寄ってきた虫は(ターゲットは主に蝶や蛾)
雄しべや雌しべを足場にしてぶら下がり、羽をバタつかせ必死な思いで蜜を吸わなければならない。
そうこうしているうちに虫の身体は花粉まみれになっている。
そしてまた次のカタクリの蜜を求めて虫たちは旅に出る。
めでたく受粉の完了。というわけだ。
古名は『堅香子(カタカゴ)』
花の様子が「傾いたカゴ」に似ていることから「カタカゴ」
それに「ユリ」を足して
カタコユリ
なまって
カタクリ
と呼ばれるようになったそうです。
カタクリはユリ科である
ユリ類の球根はでんぷん質が豊富である。
はるか昔、重要なでん粉類は「ウリ(Uri)」に由来する発音で表された。
うるち米
くり
くるみ
そして、ユリ
アイヌの人々もこのカタクリの球根を重要な保存食としていた。
アイヌ語で『エシケリムリム』
アイヌは植物自体に名前をつけることはしなく、日常生活で利用する部位にのみ名前をつける。
この『エシケリムリム』もカタクリ全体ではなく、根(鱗茎)の部分を呼んでいた。
鱗茎の部分を臼でついてデンプンを取り、おかゆに入れて食べた。
また、鱗茎を集めて樽に入れマサカリでたたき、水を張る。水を何回も取り替えると底に白いでんぷんが溜まる。それを団子のようにして穴を開け、紐を通して炉棚に掛けて干し、保存食にしたそうです。
ちなみにご存知の『片栗粉』はこの『カタクリ』からきていますよ。
今はもうほとんどが馬鈴薯のでんぷんから作られていますが。。。
ユリ科は強いのだ
ユリは「百合」と書く。
これは球根がたくさんのウロコのようなもの(鱗片)が合わさっていることによる。
万が一球根が食べられそうになった時、ウロコのような部分がバラバラと崩れ
大地に残った球根の一部はやがて根を出し、新しい球根をそこに形成するのだ。
カタクリはリスクマネジメントを怠らず、花の開花に向けて日々準備をする努力家なのです。
ちなみにカタクリの球根は地下20cm程のところにあり
なかなか見つけられない。
そして小指ほどのサイズであることに驚いた。
この小さい球根にエネルギーをいっぱい溜めて
ここぞという時に一気に使う。
カタクリさんすごいッス!
まとめ
春に彩りを与えてくれるカタクリ。
その花の裏側を知ると、今年も会えたことが嬉しくなるし、勇気ももらう。
厳しい冬を耐え抜き
準備を怠らなかった春の妖精たち。
また来年も会える日を楽しみに
花咲く準備、僕もがんばります。