二度とない光景の連続

奥尻島には本当に「何もない」のか。

ダイヤモンドも磨かなければ、ただの石ころ。
ましてやその存在に気づかなければ磨かれることもない。


僕は奥尻島に移住して島を知っていく中で、島の8割を森林が占めていることに驚いた。
しかもその内、6割がブナの木である。
世界中どこを探しても、「島丸ごとブナ林帯」というのは存在しないのではないかと思っている。
(もしあれば教えていただきたい)

よく、「島には何もない」と言う。
たしかに「人工的なものは多くはない」でも逆に言うと、
「リアリティーがいっぱいある」とも言える。
「作られたニセモノもの、ではない本物」
本物とはリアルなもの。


24時間眠らない町で暮らしていたら、本当の「夜」を体感する機会はない。
満天の星空も、月が想像以上に明るいことも、静寂も、漆黒の闇も、星が見れない日もあるということも知ることができない。

プールでしか遊んだ経験がなければ、
「海」でも365日、いつでも遊べると思ってしまう。
でも実際は、天候によって遊べない日もいっぱいある。
時化た時の海なんかは、恐怖を通り越して「神々しさ」さえ感じる。
海水温は陸上の一ヶ月遅れで変化することも、風向きが刻々と変わることも、海の生き物の顔ぶれが季節によって変わることも気づけない。

いくらバーチャルな世界で森を歩き回っても、五感は研ぎ澄まされることはない。
春に備えてじっと厳しい冬を耐えている冬芽の存在、まだ雪も溶け切らない早春にすでに誇らしく咲いている花々の立ち姿、足元の植物が日に日に変わっていること、命が循環している大地の香り、渡りを知らせる鳥の囀り、アスファルトでは感じられないフワフワの林床を感じることもできない。

知識では知っていても本当に「知る」ことは難しい。


ついつい都会(人工物に囲まれた場所)に慣れてしまった我々は、
「何でも思い通りにコントロールできる」と思ってしまうことがある。(僕がそうだった)
自然は「どうにもならない時はどうにもならない」からこそ、自分を自然に合わせていくほうが無理なく楽しむことができるはず。

本物に触れ、自然の方に自分をチューニングすることで、
たくさんの気付きがあるし、そこに豊かさがあると思っています。


僕はブナの木がどれかも識別できないところから勉強を始めて、
ブナ林ガイドツアーをスタートさせた。
そして4年目になり、北海道知事認定のプロガイドとなり、
より奥尻島の自然のすばらしさを感じられるようになってきた。

島民向けブナ林ツアーの実現


2021年9月に「奥尻空港ー函館空港」の利用者を増やすにはどうしたらよいか、
という有識者会議が行われた。
有識者は4日間をかけて奥尻島のありとあらゆるものを体験し、食し巡っていく。

ツアー最終日に有識者からフィードバックをもらう会議が行われた。
参加者は、有識者に加え、奥尻町役場の方々、航空事業者、観光事業に携わる方々などが集まった。
司会者が
「この4日間で一番印象的だったことは何か?」という問いに、16名の有識者の大半の方が、

「外崎さんのブナ林ガイド」

と言ってくれた。
素直に嬉しかった。
でもそれ以上に嬉しいことがあった。
それは、会議に出席していた役場の方が、

「有識者の方が感動したブナ林のことを正直知らない。外崎さんのツアーも受けたことがない。
これはよくないから、ブナ林ガイドツアーを受けたいと思う」

と会議の場で言ってくれたのだ。
僕は涙が出そうだった。
ここには書かないけど、たくさんつらい思いもしてきた。
でも信念を持ってやり続ければ、いつか伝わると信じてやってきたので、
これが大きな一歩であることは確実だった。

そして10月に奥尻島民対象のブナ林ガイドツアーが3日間に渡り実施された。
たまたまYoutuberのダイキ君が取材に来てくれていたので、ツアーの様子を撮ってくれていました。

<当日の様子>

<島民の方々の感想>

僕にできる島への恩返し

「地元の方が地元を愛すること」


それが何より島を明るくすると思います。
僕自身も、もっともっと奥尻島のことを好きになれるように、
これからもたくさん遊んでいきたいです。
そして微力ながらも、僕の活動を通して奥尻島に恩を返していくことができるのならガイド冥利に尽きます。

今回はこのような「島民向けブナ林ガイドツアー」を企画していただき、
本当にありがとうございました。
参加していただいた島民の方々にも感謝申し上げます。

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